STARMANN

眩しくて 手を振れば 遠く輝いて瞬く星座

総合芸術としての役者・松岡広大〜ディズニーミュージカル『NEWSIES』

2020卍リベンジャーズ!!!
2020年に潰れた舞台の中で特に傷が深かった一作にして、2021年最高の一作。そして、大切な推しの東宝ミュージカル初出演作
昨年の雪辱の全公演中止を乗り越えて、無事全公演を完走し大千穐楽を迎えられました!!おめでとう、ありがとう!!

こんなにハッピーな世界に連れてきてもらえるなんて、一年半待った甲斐あったわ...中止になったときは正直リベンジまで最低2年はかかると思っていたから、こんなに早く実現してくれるとは思わなかった。でも信じてたから!広大くんのこの言葉を!



中止から1年半、出演発表から数えたら2年以上、本当に楽しみにしてきた夢のステージだったから、終わった今もまるで夢を見ていたみたいに現実味が無いのが正直なところ。でも、あの夢のような時間と景色はたしかに目の前にあった、広大くんは間違いなく、私なんぞの理想をはるかに上回るかたちで東宝ミュージカルプリンシパルデビューしたという事実を、ここに書き残したい所存なり。

その時、歴史が動いた

去年の帝劇JB初日のチケット3回勝ち取った時から薄々勘づいていたけど*1、吾輩は持ってるおたくである(金は常に無い)『ニュージーズ』日本初演初日のチケット勝ち取りました~~~~アミュモバしか勝たん!ちなみにアミュモバくん、去年は東京楽を勝ち取ってた。優秀すぎ。

「こんなに早く実現してくれるなんて…」という気持ちと「やっと『初日おめでとう』と言える!」という気持ちで迎えた初日。

1幕冒頭の1曲目、ジャックと共にクラッチーが歌い始めた瞬間に涙が溢れてきた。止まっていた時が動き出した。ニュージーズの世界が、日本版『ニュージーズ』という作品の歴史が、こんなに美しいメロディーを二人で響かせる、大我と広大の二人から始まるなんて…!そこから終演まで「たった今、目の前で、歴史が動いている」という興奮で始終鳥肌が立ちっぱなしだった。

初日の会場はとても温かく、忘れられない公演になった。キャストの晴れやかな表情をとっても、曲ごとに起こる割れんばかりの拍手をとっても、あの場にいた全員が開幕を待ち望んできたことを物語っていた。ご存知ですか、拍手だけでも観客の「声」って聞こえるのよ。「初日おめでとう」「待ってたよ」「会いたかったよ」「リベンジ叶えてくれてありがとう」「ブラボー!」って、みんなが言ってるのがちゃんと聞こえたよ。演者にも届いていたはずだと思う。

音楽の神が手がけたミュージカル『ニュージーズ』

『ニュージーズ』という作品に初めて触れて感じたのは、ニュージーズの若さ溢れるパフォーマンスの力。ニュージーズのリーダーはジャックであり公演の座長は大我だけれど、メンバー全員が結集してひとつの「ニュージーズ」というタイトルロールを演じる主役なのだと思う。苦境にある子供たちの話であるにもかかわらず、ハッピーなエンターテインメントとして楽しめるのは、ニュージーズのファビュラスなパフォーマンスと明るい笑顔のためだろう。*2

そして最大の魅力の一つは、もちろん楽曲。ディズニー(とジブリ)で育ち、学生時代は吹奏楽に命をかけ*3、今も細々と音楽活動をしている人間にとって、アラン=メンケンは現存する神である。*4とりわけ好きなディズニー映画は『美女と野獣』『リトルマーメイド』。『シスター・アクト〜天使にラブ・ソングを〜』ではその楽曲の美しさに帝劇で泣き崩れた。ちなみに、好きなディズニーシーのアトラクションは『シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ』。

そんな神が手掛けた楽曲だから、当然どれも最高にドストライク!!本能にぶっささってくるのよ!!耳に残るのよ!!みんなシンドバッド降りた後「人生~~~~~は~ぼうけ~~~んだ~~~~~地図はな~~~いけ~れ~ど~~~~~~」って頭から離れないでしょ?!全曲あのクオリティよ!!

美しい旋律やキャッチーなサウンドが、必死ながらも楽しく生きるニュージーズの生活や、ストライキに立ち上がる彼らの闘志をキラキラと彩っていて、常に心を躍らせてくれる。特に好きなのは以下の曲。

  • Santa Fe

クラッチーのソロナンバーも含め、劇中何度も繰り返される、理想郷を夢見るジャックの歌。最終的に彼が見つける理想郷とは...!

  • Carrying the Banner

苦労しながらも愉快にたくましく生きるニュージーズの日常を明るく描き、幕開け早々観客をワクワクさせてくれる上に、この1曲で『ニュージーズ』の世界観がわかっちゃう美女と野獣でいう『朝の風景』、リトルマーメイドでいう『アンダー・ザ・シー』みたいなワクワクソング。1幕では日常ソングだったのが、ラストのリプライズで人生薔薇色ソングに様変わりして聞こえるのが、メンケンマジックよ...

  • The World Will Know

「ピュリツァ―に卸値上げられてんのに日和ってる奴いる?居ねぇよなぁ。ストライキやんぞ」ソング。途中で入る掛け声もパワー溢れるニュージーズらしくて、バチバチにかっこいい。Once and for Allもそうだけど、ロックテイストなのが馴染みやすくて好きだし、合間合間に入るトランペットのファンファーレもかっこいい。少年とトランペットの親和性が異常。「今日の俺たちが明日ニュースに」のクラッチー最高にかっこいい愛してる。

  • Seize the Day

絶賛ストライキ中ソング。デイヴィのソロで始まって一人また一人と加わり、美しい旋律が次々に重なり力強い響きになっていく様は、仲間と力を合わせて勢いを増していくニュージーズそのもの。演出から見ても、タイトルロールとしてのニュージーズの最大の見せ場。トランペットのソロで始まるOvertureも好き!少年とトランペットの親和性が(ry

  • Something to Believe In

Santa Feと並ぶ本作の聴かせどころ。アラジンでいう『ホールニューワールド』。ラプンツェルでいう『輝く未来』。リトル・ショップ・オブ・ホラーズでいう(ry

  • (番外編)King Of New York

これは曲がどうこうとかじゃない。ゆうみちゃんBIG LOVE

ミュージカル界での人気はさておき、日本における知名度はまだ低いけれど、いつか絶対ニューサウンズかウインズスコアで吹奏楽版メドレー出してほしい。やりたい。*5


楽曲単体の良さだけでなく、リプライズを効果的に利用した全体の印象も、That's Disney Musical!!と言わんばかりのわかりやすさで、誰が見ても確実に楽しめる。私の信仰を爆発させたあまりにもシビれるシーンについては、こちらで熱弁しています。

そんな神が創り給うた本作の看板『サンタフェ』のメロを、日生劇場で時にはデュエットで、時にはソロで歌う推しを見られた幸せは、『リトルマーメイド・イン・コンサート』でアラン=メンケン本人によるディズニー楽曲のピアノ弾き語りメドレーを生で聴いたときのそれを超えた。ここが私のアナザースカイ、もとい、サンタフェアラン=メンケンを信仰する松岡の女として生きてきてよかった...

総合芸術としての役者・松岡広大

パワフルなキャストの中心に立ち、ディズニーのキラキラした世界の住人としてのびのびと生きる広大くんの姿に、感慨もひとしおだった。ミュージカルは総合芸術だというけれど、『ニュージーズ』の広大くんは、これまで広大くんが役者として培ってきたものを全て出し切るほどの「総合芸術・松岡広大」だった。

身体表現・ダンス

クラッチーは足が不自由な少年だと聞いていたから「もしかしたらあまり踊らないのかなぁ」としょんぼりしていたけれど、むしろその逆で、身体能力が高くないと務まらない物理的難役で、彼は見事にそれをモノにしていた。足を引きずる表現は、おそらく日に日に痛々しくリアルになっていたんだと思う。初日より中盤で観た時の方が足の運び方が重たくなっていて、階段を降りるときの軽やかさも無くなっていた。日々深化に余念が無いのよ…

足首がぐにゃんと曲がった痛々しい姿をリアルに演じつつ、持ち前の身体表現力でしっかり踊る。こればかりは見ないとわからないんだけど、バチバチに踊ってんのよクラッチー。松葉杖ついてるのに。ほかのメンバーとほぼ同じ振りをこなし、同じ速度でターンして、松葉杖が完全に身体と一体化している。人間って松葉杖ついててもこんなにキレッキレに踊れるのか!もはやびっくり人間の域だが?!

松葉杖があろうが身体表現力の緻密さは変わらず、動きのキレから手の伸ばし方に至るまで、表現に余念がない。更に、ハンサムのときと違って役としての気持ちも乗ってるから、The World Will Knowなんかは闘志がオーラになって見えるようで、力強いまなざしも大好きだったな…

若手の精鋭ダンサーの真ん中で歌い踊る姿は、おたくだったら誰でも夢見る「こんな推しが見たい」の権化で、はぁ松岡の女やっててよかった...(2回目)


歌唱

歌については苦手意識があったって話していたけれど、それは君の周りにいる仲間たちが平均的に歌うますぎるせいです(主にハンサム勢)冗談はさておき、4月のハンサムでも「またうまくなったな~」と思ったけど、それ以上に、常にお芝居の中に歌があったのがとっても良かった。

私自身、実は歌の上手さより芝居の方が見どころとしての優先順位が高いから、いくら歌がうまくても芝居があれだったり、「歌ってます~~~~~!!!!!」っていう歌はかえってしらける。最近見た別の舞台で「歌と芝居が分離してるな~」と思ってしらけてしまう例があったから結構懸念していたのだけれど、クラッチーはお芝居と歌が地続きだった。

特に『感化院からの手紙』のシーンは、メロディがありつつも歌いすぎず、歌と台詞の間の中間色的な表現が非常に彼らしく、短いシーンでもクラッチーの心情を繊細に表現していて、とても印象深かった。立ち上がってブラボーと叫びたかった。芝居と歌の間に段差がなく、完全バリアフリーで過ごしやすい空間。なんということでしょう(???)

ナルトの時からそのスタンスは好きだし、今回『スリル・ミー』(以下「すり身」)での経験がめちゃくちゃ活きてそう*6。これを機にまたミュージカルの出演が決まったら嬉しいけど、今のスタンスがあるのもストプレとミュージカルをバランスよくやってきた成果だろうから、これからもバランスよく出演作の幅を広げてほしいな…

芝居

歌や踊りだけではなく、大好きな広大くんの"目"のお芝居もしっかり堪能できた。底なしに明るい笑顔を連発しているクラッチー。こんなによく笑う役は久しぶりで始終可愛くてメロメロなんだけど、それだけで終わらせないのが俺たちの松岡広大であり、そんな彼の最大の武器 is

松葉杖を奪われて倒れ込んだクラッチーが、言い返しもやり返しもせずに、どこか諦めたように「堪えるスタンス」に転じるような目をする瞬間があった

(以下筆者の妄想)

もしかしたら、この子は昔から脚のことでいじめられてきて、言い返せずただ堪えるうちに、今のように常に笑顔で笑い飛ばすことを覚えたのかもしれない。何もかも笑い飛ばして、脚が悪いことすら新聞を売るのに利用したら、健常者にも劣らない部数を一人前に売れるようになって、他のニュージーズにも認められた。そしていつも笑顔でいることで、ニュージーズの仲間たちの輪の中心になっていったのかなと思っている。

でも杖を奪われて転ばされたら、何も出来ずただ堪えるしかできなかった昔の癖が蘇ってくるのかもしれない。

そんな時に手を差し伸べてくれるのがニュージーズの仲間で、特にジャックは、この生活を抜け出す大きな夢を持った、クラッチーにとっては希望みたいな存在なんだと思う。ジャックが、転んだ自分を助け起こしてくれたり、サンタフェに行く夢を語ったり、スト破りをけしかけられた仲間を説得したりするとき、クラッチーは彼のことを眩しそうに見つめて、屈託なく笑う。

ニュージーズの仲間は、クラッチーが、足の不自由な少年ではなく一人の新聞売りで居られる唯一の居場所で、更には、一番の親友がそんな居場所を「家族」と呼んでくれた。感化院からの手紙で「家族同士守り合え」と伝えようとしたクラッチーの、「もう家族に傷ついてほしくない」という痛切な願いと愛情を切ないほどに感じてしまって、もうダメです。涙腺が。

(妄想終了)

と、まぁ本来ここまで考えなくていいんだけど、クラッチーとしてそこに居る役者がそういう目をした(ように少なくとも私には見えた)なら、そこに当然あるはずのクラッチーという人間の人生を垣間見たっていいじゃない。おたくだもの。みきを。

みんなのムードメーカーで場を盛り上げたかと思えば、ひとりぼっちの苦境でも仲間を想い「僕は大丈夫」と痛々しくも気丈に笑ってみせたり、明るい笑顔とそこに内包される不安や恐怖という二つの面がしっかりと見て取れて、クラッチ―という人間の本質を立体的に受け取ることができた。君はどんな思いで「クラッチー」という名前を自称しているんだよ…しんっど…


表情豊かな広大くんの目は役の背景を想像させてくれるので、彼の瞳の揺れに心情や生い立ちを垣間見るたびに、クラッチーという人間が好きになった。貧困やハンディキャップに屈することなく、仲間と力を合わせて笑顔で逞しく生きようとするクラッチーが愛おしくてたまらない。うちの子にならないかい???じゃなくて!霧ちゃんやナルトに匹敵するくらい、大好きな役になったよ。


ビジュアルもバチバチに良くて、見るたびに「エッ!なにあの宇宙一かっこいい人!!って、なーんだうちの推しじゃん☆今日も宇宙一かっこいい☆」な仕上がりで、なんかもう大好き(語彙の死)

歌もダンスもお芝居も、役者としての彼が今為せるすべてを総動員させた、まさに総合芸術としての役者・松岡広大が描き出したのが、クラッチーだった。




昨年の公演中止の時、一番つらかったのはカンパニーの皆で、広大くんもまた、私なんぞには想像もできないくらい苦しんだんだと思う。それでも「『ニュージーズ』絶対にやります」と約束してくれて、苦しみを乗り越え、数々のエンターテインメントを届けてくれた。

もし予定通り上演されていたら、すり身はニュージーズの後になっていたので、すり身での経験がニュージーズに還元されることは無かったかもしれない。逆にすり身は、2020年のニュージーズ稽古を経た状態でオーディションを受けて勝ち取っているはずなので、すり身への出演自体がニュージーズの稽古から還元されたものだと私は思っている。一度は中止になってしまっても時計を止めずに動かし続けてきたおかげで、ニュージーズでのクラッチーの好演がある。

たくさん苦しみながらもエンタメを諦めないことを決意して、舞台に立ち続けてくれた。

「エンタメって『不要』なものだっけ?そうじゃないよね。僕たちは『不要』なものこそ欲しいんじゃないの?それがないと生きていけないんじゃないの?」


「僕は、エンターテイメントは絶対に必要だってことを証明したい」


「演劇は無くならないよ」

って、何度も言ってくれた。そして約束を果たし、こんなにハッピーな景色を見せてくれたんだ。松岡広大くんは、有言実行の漢です。ああ、またこの1年半の走馬灯が見えてきた…



困難を乗り越えたことでより強くなった想いを抱きしめて『ニュージーズ』を届け、その愛を私たちに分けてくれたカンパニーに盛大な拍手と感謝を!

ありがとう、NEWSIES of JAPAN!
ありがとう、広大くん!
いつかまた、「おかえりなさい」と言わせてね!

*1:なぜ初日が3回存在したのかについては、過去のブログ読んでね。 tea-miki.hatenablog.com

*2:「本家BW版で描かれ提起される貧困問題が捨象され過ぎている」といった意見もあったが、私はBW版を観ていないから、観てないものと比較してとやかく言う大義も権利も無い。推しと宣伝が「とにかく楽しいミュージカル!」「何も考えずに楽しんで!」って言うんだから、私はDon't think! Feel!!でとにかく目の前のものを楽しむことに全力を注いだ。

*3:実はディズニーランドで演奏したこともある。

*4:アラン=メンケンとジョン=ウィリアムズと久石譲は三大神。

*5:吹奏楽の楽譜が出るくらいのビッグタイトルになるには、やっぱり帝劇に行かないといけないのかな...

*6:相方の山崎大輝くんも、歌バリ上手いけどやっぱりお芝居がめちゃくちゃ生きる役者さんで、完全バリアフリー俳優だった。