STARMANN

眩しくて 手を振れば 遠く輝いて瞬く星座

ココが好きだよ!ミュージカル『刀剣乱舞』髭切膝丸 双騎出陣2020〜SOGA〜

インスタに入りきらなそうだからブログにしたよシリーズ第二弾。
2020年てぃーみきアワード 楽しかった現場大賞ノミネート作品。
プチ遠征(と言いつつ自宅からの距離は年内最短)も含めて、伝説の福井遠征の次に楽しかった!!源氏最高!!




初演時から賛否両論あったらしい本作。私は初演は現地で見られずライビュのみで、再演で初めて生で観たのだけれど、肌で体感して改めて思った。


私はもう最高にどちゃくそ大好き!!今まで観た刀ミュのお芝居の中で一番好き!!

まぁこれは、私が中の人込みで三浦宏規と高野洸の演じる髭切・膝丸が、そもそも演劇が好きでこの沼に突っ込んだおたくで、『演劇』という観点に重きを置いて観ているからそう思うわけで、『刀剣乱舞』に重きを置くともしかしたらまた話が違ってくるのかもしれない。それも分かったうえで、今から「双騎のココが好き!」という賛辞しか述べません!!



刀ミュ×曽我物語


まずはお話がめちゃくちゃ好き。史実に基づいているとはいえ、悠久の長きにわたって日本人好みの「仇討ち」の物語として語り継がれてきた曽我物語がベースなので、話自体の面白さ、わかりやすさは折り紙付き。



<雁>


他の曽我物語関係の作品を知らないけれど、SOGAでは「雁」が象徴的に登場する。曽我兄弟が雁の姿に亡き父を想ったことは伝承として残っているらしいけれど、そこに焦点を絞って物語の軸に持ってきた脚本がとても好きだった。敵討ちを果たさんとする二人の強い思いが、「あの日見た雁の家族」というかつての自分たちの幸せの象徴の1点に集中し、より一途に、より切々と伝わってくる。


幼い頃、父を亡くし弟と生き別れた喪失感を「今はもうあの鳥の音が聞こえない」と喩えた十郎が最期に聞いた雁の鳴き声は、本懐を遂げ幼き日の心の安寧が戻ってきた証で幻聴なのかもしれない。空耳だと思おうと、十郎の心の中で雁が音が再び響いたなら良かった…十郎が五郎に手を伸ばしながら最期に見せた笑顔が眩しくて儚なくて美しかった。


先に雁を見つけてそんな十郎に「あにうえ!とりです!」と教えてくれるのは、ちっちゃい頃から最期まで五郎だった。これ、二人の亡くなった日に雁は飛んでいなかったし、失血で目も見えなくなってるから幻聴・幻覚だっていう解釈もあるみたいだけど、私は雁飛んでてほしいし、少なくとも五郎には見えててほしいし聞こえててほしい!!
五郎が最期に雁が音を聴いて「空耳ではない。確かに聞こえます」と歌うとき、合いの手で「ガァガァ〜♫」の旋律が入ってるの憎すぎるよね…刀ミュはそういう仕掛けをたくさんしてくるから、本当は何度も見てそういうのに気づきたい。



<モノが語り継ぐ物語>


曽我兄弟の結末は悲しいし、SOGAも始終物悲しい雰囲気だけれど、1部ラストのG線上のアリアの後、最後の一音がすごく綺麗な和音で締めくくられていて、命を懸けた覚悟の美しさ、潔さが胸に残ってスッと終わっていくのがまた泣ける。


主人公たちがマスクを外して始まった物語が、主人公たちに再びマスクを被せて終わっていく。始点から終点までがひとつの物語としてしっかり結ばれていて、悠久の想いと生き様が現代のSOGAの物語の中に「保存されている」と感じる。曽我物語のストーリーに加えて、このSOGAで伝統芸能との融合によって刀ミュが伝えたかった『語り継ぐ』ということ、ずっと刀ミュの根っこに在る『モノが語る故物語』というテーマが色濃く表れていたように思う。ヒトの思いを語り継ぐモノ。こうして伝承は語り継がれていくのか…





演出、美術、配信


更に、美術がすごい。美術?というか、衣装、ウィッグ、メイク。ただでさえ2次元を再現するクオリティーの高い刀ミュ美術陣営の本気。


ベースの衣装は変えていないのに、羽織るものや袖・裾の長さを変えるだけで人間の成長の表現をここまでデフォルメできるのが凄い。髪の長さもウィッグを替えずに変化させて、しかも演出によってエモエモにしよって、アイディアが凄い。ポニーテールはずるいよねって洸くんも言ってたぞ。


ナルステの衣装の話で読んだんだけど、首元からフェイスラインを隠すことでだいぶ幼く見えるそう。宏規も洸くんも首太いのに、あのピンクの可愛いやつのお陰で一万と筥王がバブバブ見えてるんですな…


ピンクのかわいいやつを脱いだ青い和服は、2部もひっくるめた全編で一番好き。髭切要素、膝丸要素、歌舞伎要素いろいろぶっこんでるのに、ごちゃごちゃせずまとまっていて、しかもちゃんと二人のデザインが対になっている。こういうの大好きだよおたくはよぉ(泣)


そしてSOGAの醍醐味・隈取。KUMADORI。

よくやった刀ミュ!!!!!!(n回目)


兄は薄く、弟はバチバチに隈取してるのは、歌舞伎の十郎が和事、五郎が荒事で表現されるのに則ってるっぽい。バレエが得意な宏規の優雅な髭切と、ストリート・ポップス系が得意な洸くんの質実剛健な膝丸っていう、中の中の人(?)にまでシンクロしてて、源氏兄弟と曽我兄弟を演じたふたりの宿命を感じて何度拝んだことか…!




尺もよかった!1部で1時間、2部で1時間、休憩30分込みで2時間半。This is 最高にちょうどいい尺。


4歳と2歳の兄弟が、たった60分で生き別れて元服して再会して仇討ちして死んじゃうので本当にあっという間に終わってしまうんだけど、全シーンが重要で尊くて無駄がなく、間延びもしないから観客の集中力も持続しやすい。*1




おまけに、配信チームの仕事ぶりも素晴らしかった!全公演生配信で、公演回数を経るごとにスイッチングや分割がどんどん凝っていって、最後のほうは「ここが見たい!」と思う箇所は全部映してくれていた気がする。千秋楽には、それまでの配信では見たことがないカメラがいっぱい入っていて、千秋楽配信特別バージョンでお送りしてくださった。よりエモい映像を流すことに日々妥協しない配信チームに脱帽した。ありがとうございました。



今回の再演では、感染症対策のため、演者同士が触れ合わず距離を取るようにしてたけど、衣装替えは初演から変わってないし、本公演とは一線を画したからこそ出演者も少なくステージが密になることはない。感染対策が万全な環境だったのもここまで入れ込めた要因かな、個人的に。最期に手を握ることすら許されなかったことに関しては感染症絶対許さないけど。



Starring 三浦宏規 高野洸


もうこれに尽きるんだけど、宏規も洸くんも、芝居も歌もダンスも上手いから、1部の芝居も2部のパフォーマンスも両方格段にクオリティが高くて満足度がすごい。本当によくぞ彼らを見つけてきてくれた刀ミュくん。


三浦宏規の髭切と高野洸の膝丸を2年ないしは3年預かり、ミュ審神者が喜ぶ兄弟シンメとして担ぎ上げてきたクリエイター陣の手にかかれば、三浦宏規の髭切と高野洸の膝丸が演じることによる物語への付加価値を最大限に活かした超尊いものが出てくるに決まっている。


泣きじゃくる弟を見て仇討ちを決意しひたむきに鍛錬に励む兄と、そんな兄に寄り添おう追いつこうと大きく成長する弟。
「私が追いかけたいのはあなたの背中。強くなりたい。追いつきたい」
「私が凛としていられるのはお前のまなざし、しゃんと立つ背中を見せたいのだ」
過不足なくお互いに影響し合って強くなっていく兄弟。誰かが『SOGAは髭切と膝丸の聖書』って言ってたな…これが兄弟(概念)…




そして、なんといっても巣立ちの舞。

五郎がしっとりと歌って兄者が優美に舞い、兄者は雄々しく歌い五郎が力強く舞う。それぞれのイメージと踊りの得意分野に合わせた構成・編曲で作られているし、なんなら舞のくだり自体が刀ミュオリジナルだそうで、三浦宏規と高野洸のために作られた演目として最大の見せ場(大拍手)

ステージを横から見るような位置で観劇したので、最後のユニゾンの羽ばたくような振りを並んで踊る二人の背中がよく見えた。若き鳥たちが今まさに母鳥の元から飛び立とうとする姿を、概念ではなく視覚的に叩きつけられる。実はステージ奥にカメラ入ってたりしないかな…母上アングル円盤に入らないかな…




個人のスキルはもちろん、「似ているようで似ていない源氏兄弟」もしくは「似ていないようで似ている洸と宏規」*2対比による調和がこのふたりの良さだという持論がありまして、これが遺憾なく発揮されるのが2部。




例えば獣で、ひざぴが常にガシガシ!ってエイトビート刻んでるのに対して、ビート感じつつゆらりとした佇まいで色気振りまく兄者っていう、この対比よ…得意ジャンルが違えば個性もバラバラだけど、対比によって調和を生むという奇跡。…前にもこんな話したな*3


今回新しく増えた新衣装も、髭切はシンプルな白いふわふわのシフォンのシャツに裾がひらひらするジレ、膝丸は装飾ゴテゴテで身体のラインにぴったり合ったレザーパンツ、という具合に完全に真逆。舞台上でひとり、歌でしっとりと魅せる髭切ソロと、ダンサーを引き連れて情熱的なダンスを披露する膝丸ソロ。それぞれのソロ曲にもマッチするし、この衣装のままふたりで踊ると対の衣装に見える。シフォンとレザーってシンメだったんですね…


同じ振りで踊ると腕を回す速度とか立ち姿とか個性出まくってて、それぞれ一人で踊っても成立するけど、ふたりで並んで踊っても「揃ってない」とは感じさせずむしろマリアージュする、こんなふたりが他に居ます???私は洸と宏規以外だとKinKi Kidsしか知りません。*4




作品の話を中心にしてきたけれど、刀ミュの源氏兄弟に「歌える」「踊れる」「身体が利く」「仲良し」「尊い」などなどの付加価値を与えてここまで人気を押し上げたのは、洸と宏規自身の力。相性的にも二人がここまでマッチするなんて、キャスティングした側も思わなかっただろう。何かと物議をかもしたっぽい2.5次元俳優総選挙では並んでランクインという奇跡。洸と宏規の物語を奇跡にしたのは洸と宏規です(哲学)


洸と宏規が好きだけど、髭切と膝丸、一万と筥王の歴史を背負ってきたからこそ二人を好きになったわけで、洸と宏規として一生一緒に居てほしい反面、髭切と膝丸という役も背負い続けてほしいの…エグいことを言う審神者でごめん…



刀ミュの新たなチャレンジとしての『髭切膝丸 双騎出陣〜SOGA〜』


SOGAは従来の刀ミュからするとかなり異色だけど、古典の伝承と伝統芸能・現代の新しい演劇の融合という点で考えれば大成功だと思う。和物のオリジナルミュージカルをシリーズでやってきて、そこに曽我兄弟にまつわるキャラクターが出ていて、演出家が花組芝居にツテがあって笑…という巡り合わせもまた奇跡だな。
刀ミュチームでこの融合を見せるなら、それを為し得るのは髭切と膝丸の双騎出陣でしかあり得なかったとも思う。曽我物を演るなら花組芝居が出ることは必定だけれど、通常の本公演に出ても脈絡が無く、刀剣男士6振の物語に加えたらくどくなる。いろんな縁と奇跡が重なって実現してるんだと思う。


って観た当時は思ってたけど、あれからいろいろ見て考えて、そもそも刀ミュに髭切と膝丸を出した目的が曽我物語をやることにあったんじゃないかとさえ思えてきた。二振りを出してから「曽我ものをやろう!」と思い付いたにしては、あまりにも条件が整いすぎている笑 これがやりたかったんだろおじさんたち~~~やり切った感あるけど、どうかまた本公演に源氏出してねえええええええ




2部はアレルギーある人にはキツいだろうけど、1部のSOGAは刀剣乱舞ミリしらでも全然平気だし、曽我物語だから当然わかりやすく面白くて尊いから、CS放映とかやっていろんな人に見てほしい。12月1日からアーカイブ配信始まったので、どうか見てほしい。
双騎を見ていない人が少なからず存在することが悔しいわ…全人類見て…

*1:連日双騎配信見たあとに、幕末で刀ミュのスタンダード尺に戻ったら、体感めちゃくちゃ長かった

*2:驚くなかれ、これ宏規本人が言ってるんだよ…(頭抱)

*3:参考:KinKi Kids『薔薇と太陽』MV(2016年)

*4:参考:KinKi Kids 『We are KinKi Kids Live Tour 2016 ~TSUYOSHI & KOICHI~』(2016年)※Amazon Primeで視聴可能