STARMANN

いつか光を超えて、わたしを空へ連れ出して

浪漫活劇『るろうに剣心』

初夏から待ちに待っていた推し現場をひとつ終えた
ーーーーー浪漫活劇『るろうに剣心』。

観劇記録としてインスタに感想を上げようとしたのだが、思いがけずはてなサイズになってしまい、
自分でも思っている以上にこじらせていることを察したので、急遽はてなに切り替える。

明後日にはロンドンとニュージャージーをはしごせねばならんので、それまでに書き上げられるといいな…

いっけな~い!地雷地雷!

るろうに剣心』といえば言わずと知れた人気時代アニメで、舞台は明治初期の日本。かつて維新志士として幕末の動乱を駆け抜けた、緋村剣心を主人公とした物語だ。

前回のブログで告発したように、
めでたく推しになったばかりの松岡広大くんが演じるのは、その剣心の過去の姿である緋村抜刀斎。
絶賛維新志士の緋村抜刀斎

一方私は根っからの土方DD
薄桜鬼、愛してます。
壬生寺、八木邸、旧前川邸、行きました。
土方歳三の生家、行きました。
和泉守兼定、見ました。
推し刀、和泉守兼定堀川国広です。


………
推し現場いきなり地雷かよおい。

しかし、広大さんのおかげで私はこの作品に出会い、『るろうに剣心』というコンテンツの一部に初めて触れ、幕末や明治維新に関する歴史観まで変わった。

推しに言いたいことはたくさんあるけどとりあえずここはグッと堪え、まずは作品に関して感想を語りたい。



歴史観


初めて観劇したときは、正直やられ役な新撰組を見ているのが少しチクチクした。

「金ならある!命だけは!!」
じゃねえよ士道不覚悟!!!!!!!!!!!!!

「死にたくない…まだ死ぬわけにはいかない…」
そして推しにバッサー斬られる京都所司代及び見廻り組。

かっこ悪い…解釈違いだ…


しかし、そんな中でもまっすぐに誠を貫いている人が居た。
秋の恋人こと*1廣瀬友祐さん演じる斎藤一である。

「お前たちは自分たちだけで新しい時代を作ったと思っているようだが、
 俺たち幕府方の人間は、敗者としてそこに人生を捧げていた」
「そんな明治に巣食うダニどもを始末するのが、生き残った新撰組隊士の責務だ」
「時代にそぐわないと言われようとも、俺は変わらない。壬生の狼魂」

はーーーーーーーーーーーーーー俺たちの誠が生きてる!!!!!!!!



斎藤ら新撰組隊士が隊服を着て戦う幕末シーン、
特に幕末血風録は最高だった。

剣心と桂小五郎率いる維新志士たちが新しい時代を作ろうと決起する1コーラス目が終わると、舞台上に次々と現れる浅葱色の隊服。
青く変わる照明。
刀を手に舞う隊士たち。

「この日本を渡しはしないぞ!!!!」
めーっちゃかっこいい!!!!!!

そこに現れる、赤熊の官軍伝令。掲げるのは錦の御旗。
江戸城が門を開けたぞ!!」

次々に倒れる隊士たちを見渡し、絶望の中で天を仰ぐ斎藤が悲しくも美しく、滅びの美学を体現していた。


彼らに絶望を見せる官軍伝令を演じてるの、うちの推しなんですけどね!!!!!!!!
憎き赤熊姿で、憎き錦の御旗をりりしい顔で掲げる推し!!!!!
二役やって両方新政府側!!!!!!!地雷がすぎる!!!!!!!!!!!!!!


…取り乱しました。

しかし、私の見方が変わったきっかけは、
るろ剣ファンの間では名作として語り継がれる『追憶編』だった。

広大さんもファンで稽古期間中にご覧になっていた作品で、公演中推しサをすると、
観劇した人が広大さんへの賛辞とともに引き合いに出している。
どうやら、広大さんが演じている時代の抜刀斎が主役らしい。ということは、
ド幕末のド新政府側の話

広大さんが「見て」というなら…という思いで、
2回観劇したのちに視聴。
これがとてもよかった。


何がよかったって、まず、維新志士視点の話ではあるけれど、佐幕派も誰も目が死んでなかった
一番かっこいい頃の新撰組がかっこよく登場していた。総司が美少女。

清里…るろステで広大抜刀斎にバッサリ斬られて死んだ清里の最期も、しっかりと描かれていた。
あれは、ただ自分が死にたくないだけの往生際の悪さではなく、愛する人を幸せにしたいという強い気持ちに溢れた最期だった。

るろ剣佐幕派、そこまで解釈違わないわ…


そして、抜刀斎をはじめとする維新志士たちの思いが、討幕派目線で描かれている
新選組好きの私が見るのはだいたい新選組目線の話で、維新志士たちの志の描写にはあまり触れてこなかったのだ*2


追憶編を踏まえて観ると、全然違った。

維新志士たちは、誰もが微笑み合う平和な世の中を作るために剣を振るい、多くの血を浴びた。

そうして出来た明治政府が腐敗したものでも、
そこばかりに目が行くのは結果論で、
維新を志した戦場の彼らの目指したものは違う。
譲れないものがあるから戦うのは、討幕派も佐幕派も同じだった。



緋村剣心

引き続き、追憶編の感想で話を進める。

人を助けたい一心で師のもとを離れ、「権力に使われる」身の抜刀斎となった剣心。
人斬りの仕事を重ねるうちに、
瞳の光は失われていく。

しかし巴と過ごすうちに柔らかい表情を取り戻し、
本物の愛を育んでいく。
野菜を作り、それを食べ、
人々に薬を売り、共に生活すること。
るろステの剣心も何度も口にする「小さな幸せ」とその尊さを、抜刀斎は巴との生活の中に見出したのだと言う。


ちぎさんの剣心は、あんなにも愛らしいのに、
抜刀斎時代を背負った顔をしていた。
時折現れる修羅の片鱗のような目が、
剣心の駆け抜けてきた動乱が
遠い昔のことではないことを思わせる。

山県卿に「人斬りの過去など、私の力で簡単に消せる」と言われた時の、剣心の目。
「おろろ~」とぷらぷらしている姿からは想像もできないような、嫌悪の滲んだ炎が垣間見えた。

巴を喪い立てた不殺の誓い。
奪った命への十字架を十字傷に込めて、
明治を生きる人々のために生きていくことが、
剣心の責務であり望みでもある

ちぎ剣心の静かな「結構です…!」を聞きながら、
(権力を得て維新を終えた気になっている官僚に剣心の何がわかるんだ、ああん???)
と内心山県にメンチきっていた、昨日今日追憶編見たばかりの涙腺がばがば女です。


ところで、
追憶編と巴の人気の理由が分かったところで思うのは、
で、なんで薫なの???

不憫担で儚く美しいものが大好きな私は、
男だったら巴ドストライクだし、
広大抜刀斎が
「お前が愛する人は巴~~~~~~~~~!!!!!」
って美声で歌っちゃうのめっちゃわかる!!

で、なんで薫????????


まぁ私は原作本編まだ見てないから薫の魅力をちゃんと知らないというのは大いにあるのだが、
るろステの剣心を見ていたら、
なぜ剣心が薫に惹かれたのかは分かった気がした


侍の心を失わず剣を振るいながらも、
人を斬らず、人を助けたい。
剣心の愛刀・逆刃刀は、
そんな一見矛盾した剣心の信念を体現したもの。
刀でありながら人を傷つけない。

そして薫が謳う活人剣の心は、「人を活かす剣」。
人を殺す為の剣術で人を活かすという、矛盾。

「剣術は殺人術」
「薫殿の言っていることは、一度も自分の手を汚したことのないものが言う、甘っちょろい戯言でござるよ」

かつての師の言葉を繰り返す剣心。

「でも拙者は、そんな真実よりも、薫殿の言う戯言の方が好きでござるよ」

ああ、そうか、薫も逆刃刀なんだ。
剣術で人を活かすという矛盾を、
血の匂いのしない鋭い刃のようにまっすぐに謳う。
それはまるで、
刃こぼれも油もついていない剣心の逆刃刀のよう。

「巴のことを忘れたことはない」
と剣心は言うけれど、
剣心が薫に惹かれるのは、
今の剣心が新しい時代を生きているからなんだ。

薫派のみなさん、無礼な発言をお許しください。
ステ出のイチゲンの戯言だと思って聞き流してください。



宝塚歌劇退団後に、宝塚時代に演じた男役を再び演じるという異例なカムバックを果たしたちぎさん剣心。
しかし松竹版ちぎ剣心の存在感は、単なる「男役」ではなかったような気がする

剣心を見ている間、ちぎさんが女性だということは忘れてしまう。けれど、だからといって男だと思ってい見ているのかと言われたら、そういうわけでもない。
伝説のちぎ剣心は、緋村剣心というひとりの人間としてそこに居た。

ちぎさん自身、
早霧せいなという人間が、緋村剣心というひとりの人間を演じる」
とおっしゃっていたのが、まさにその通り。
男性も女性もいるカンパニーの中で、ちぎ剣心はどちらにも寄らないひとりの人間として、
その浮世離れした存在感、圧倒的な求心力をもって、舞台の真ん中になっていた。

なんだか不思議な感覚なのだが、他の舞台でも、きっと宝塚でも見られない、
唯一無二の存在が、早霧せいなさんの演じる緋村剣心だった。
これは本当に伝説になるな。


小池に勝てない

『劇団イケコレ』などと言われる小池先生だが、
バリバリのイケコオリジナル作品はおそらく今回初めて観た?のかな??

たぶん私は小池が生きているうちは一生勝てないと確信した。演出が好きだ

そもそも、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(の、特にヴェローナ)が大好きで、年がら年中ロミジュリ(の、主にヴェローナ)を懐古してるおたくなのだ。
言われてみれば好きじゃん小池演出。


バチバチにしびれたのはそりゃあもう幕末血風録なんだが、
セット転換で流れる曲やBGMにも、登場しているキャラクターに合わせた仕掛けがしてあって、
耳も世界観にすっと入っていけるし、単純に耳が楽しい。

剣心VS抜刀斎のラス殺陣も、象徴的でとても見ごたえがある。

舞台の端と橋で、逆刃刀を鞘に納める剣心と、激しく刀を振るう抜刀斎。
剣心の表と中身が舞台の上に表出し、その葛藤が可視化されていた。

剣心は抜刀斎に打ち勝つけれど、抜刀斎は死ぬわけではなく、無言で闇に再び消えていく。
あれは幻覚であり、剣心の潜在意識の化身でもあって、その抜刀斎の闘志こそが、今も剣心の奥底で、維新の戦いを続けさせる原動力となっているのかもしれない


蛇足だが、
広大さんが「ロミジュリに出たい」「世界の王やりたい」「ロミオやりたい」と言っていたのはほんの数年前。
こんなに早くイケコレ入りするとは…有言実行だね、広大くん。絶対出よう。


虚実皮膜

っああ~~~~~~~~~~~もう推しの話してもいいですかッッッッ

本当にすごいんだ、広大さん…私広大さんのことなめてたんだなと思った。
松岡広大」で推しサすると、1日に数人は「松岡広大」という名前を覚えて劇場を後にされていた。


広大推しとして迎える初めての舞台現場。
正直この目で見るまでは、「大したことなかったらどうしよう」とちょっと思っていた。

しかし、広大さんが抜刀斎として刀を抜いて動き出した瞬間、そんな心配や不安はすべて犬にくれてやった
髑髏城で叫んで回って走り回っていたのは
まだまだ序の口だった。

広大さんを観た友人知人に感想を聞くと、
第一声は十中八九「速い」

私も初めて観たとき、
あまりの速さに目ん玉飛び出た。
なんだあの速さ…あんなに速い殺陣、早乙女兄弟以外に見たことない…*3

速さはもちろん、肉を断つほどの重量感のある一太刀。
それでありながら動きは重くならず軽やか。
激しく動いたかと思えば、床を滑ってピタリと止まり、
怯える相手の頸動脈を正確に狙い、無情に斬り捨てる。

ちぎ剣心ともみ合いながら刀を振るい、相手の刀を止める超絶技巧一騎打ち。
一瞬も目を離せなかった。


こんな殺陣見たこと無い。
初めて見る「殺し合い」だった。


彼の殺陣を、芝居を観て、薄ミュバクステでしきりに言われていた「殺気」という言葉を思い出した。
「チャンバラ」には決して見えない、目から動きから、全身から立ち上る殺気。
実は、るろステの殺陣師の一人である六本木さんが、薄ミュで彼らに「殺気」を伝えた人だと後になってわかった。

パンフレットで自身も語っていた。
身体のどこに刃が入り、どの骨を折って倒すのか―――はっきりと相手の命を奪う意志とイメージを持って、刀を握っているんだ
真剣持たせたらマジでヤバイ。

殺陣自体は本物の殺し合いにはなりえない。
だが、そこに込める殺気、刀に込める力や精神力は、ここまで真実味を持つことができるのか。
広大さんが教えてくれた『虚実皮膜』の虚と実が、見事に共存し、殺陣という表現として成立していたように思う。


『追憶編』も、映像とはいえ、肉を断ち血を浴びる戦いが生々しく描かれていて、
彼はここからインスピレーションを受けているとはっきりとわかった。
殺陣に関しても、お芝居に関しても。


巴の背負う過去を知ってもなお、虚ろな目で「トモエヲ…マモル…」とつぶやく抜刀斎。
過去を知られても、愛した抜刀斎を守り刃を受ける巴。
巴の最後の力で頬に当てられた小刀に、
頬を寄せわずかに動かし傷をつけさせる抜刀斎

その姿が、新橋演舞場の板の上で、
巴と、巴の握る復讐の小刀を受け入れ、
深い愛に満ちた許しの表情を浮かべていた広大さんの抜刀斎に、ぴったりと重なった

パンフレットで広大さんは、稽古中に巴への愛が溢れ出たことを話している。
あの愛に溢れた表情は、広大さんの内面から表出した本物の愛情だったんだ…



台詞はガチで4行しか無かったのに、目が口以上にものを言っていたのが印象深い。

新しい時代の幕開けを告げる(憎き*4)凛々しい目
無情に維新志士を斬り捨てる人斬りの冷たい目
愛する人の裏切りに憔悴しながら戦う目
愛する人を許し受け入れる目
愛する人を喪った目
新しい時代を迎えるときがきたら、今の自分は古き時代に置いていこうと決意する目
明治に蘇る亡霊として、もう一人の自分を試す目

この人の目が大好きなんだ。
髑髏城のときもそうだった。
たぶん目から生まれてきた、走る目力。回る目力。



ちぎ剣心の歌う不殺の誓いに合わせて仕草や目を動かす広大抜刀斎。

「いつか戦が終わって新しい夜が明けたら」で
まだ見ぬ未来の「いつか」を遠くに見据える目。
「二度とは人に刃を向けないと」で
「これが最後の戦いだ」と言うように丁寧に愛刀を拾い上げる手つき。
「数えきれないほどの敵と斬り結んだ」戦の日々を想像させる激しくも美しい剣舞

ひとつひとつのシンクロニシティが、緋村剣心/抜刀斎という人物を演じる二人を
一本の人生の上に並べていくようだった


東京楽のラストシーンでは、
あの美しい剣舞で広大抜刀斎が表現した乱世を生き延びた剣心として、
ちぎ剣心がささやかな幸せの尊さを噛み締めて歌っていた。

広大さんが
「剣心の影の部分が嘘にならないように、今の剣心とリンクするように」
と言っていたのを、
ちぎさんが
「剣心の影が広大くんでよかった」
と言ってくださったのを、思い出した。

ちぎ剣心と広大抜刀斎の人生が一本に繋がったのを感じた





原作を知らないからそこまで入り込めないだろうと思っていたのに、ここまで一気に書き上げてしまっているから恐ろしい。
こんなに思い入れを持つことができたのも、広大さんが深い愛情と向上心を持って取り組んでいるのを見せてもらったからだ

開幕前、少しでも疑った自分もいたけれど、信じていたいと思っていてよかった。
松岡広大さんは、役者・表現者として、心から信頼できる人だ。
それを確信できたので、この先の人生で緋村抜刀斎という役は、霧丸と同じくらい特別な思い出になる。

素晴らしい作品・コンテンツ・伝説と引き合わせてくれた広大さんに感謝!
広大さんに出会って好きになれたことに、心から感謝!
大阪公演も、ご"舞"運をお祈りしております!!!!

*1:チャーリー、幸せになってね…ついでにティボルト、私は君の味方だよ…

*2:だって薄桜鬼愛してるからさ。

*3:アフトクにて、太一くんさん様殿に殺陣を師事したとのタレコミが入り、全江戸が納得した。

*4:超個人的見解です。